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AIの高い精度で、低侵襲手術を受ける患者さんに安全を 

低侵襲手術の需要が高まるなか、へレウスの子会社であるノーウッドメディカル社は、AIを用いて手術の正確性と患者さんの安全性の向上に貢献しています。ノーウッドメディカルの最先端AIは、機器の品質を向上させ、より安全で高効率な手術を実現。医療業界における患者ケアを革新しています。 

世界で実施されている大手術は、年間3億1千万件。うち米国では4~5千万件、ヨーロッパでは2千万件が行われています。そして世界で高齢化が進むにつれ、外科手術の安全性と質がグローバルな問題になっています。へレウスグループの主要事業会社であるノーウッドメディカルは、低侵襲手術(MIS)に不可欠な精密医療機器コンポーネントの主要メーカーとして、人工知能(AI)を活用して、医療用メスのペン先ほどの小さな損傷を検出するという画期的な技術を実現。メディカルテクノロジー業界において、患者さんの安全のために比類ない精度を保証しています。 

小切開、回復の早さ、術後の合併症の低減、入院期間の短縮など、その様々な利点により、低侵襲手術(MIS)の需要が高まっています。また、医療機器の技術革新を受け、MISの実施可能範囲が広がったことから、世界における低侵襲手術の需要は、2023~2032年の間に年間6.21%のペースで成長するとみられています。 

最優先事項である患者さんの安全を保証するには、最先端技術の活用が肝要です。組織内の多くの場面でAIを活用しているヘレウスにとっては、AIという力強いツールを医療業界の精度向上に応用することは当然のなりゆきでした。ノーウッドメディカルは、MISに使われる使い捨て医療用メスを年間およそ600万本以上製造しており、これは一般的な外科手術の幅広い分野を網羅しています。医療技術革新のパイオニアとして、へレウスの専門家チームは手術の卓越性の限界を常に押し広げ続けています。AIをベースにした自動画像検査機の導入も、その主要プロジェクトのひとつです。 

AIが打破する、精密検査の限界 

リスクの排除が極限まで求められる医療業界では、バリューチェーン全体が精密性と信頼性の確保に力を尽くしています。従来は、完成した医療用メスの検査は、顕微鏡と肉眼によって行われていました。年間600万本のメスを生産するにあたっては、このプロセスはすなわち、Type Cプラグ先端の半分ほどの大きさのメスを、肉眼で何千万回も検査することを意味していました。 

この状況を改善すべく、へレウスのプロジェクトチームは、まずリニアカッターの改良イニシアチブを開始しました。これは、4つのカメラを搭載したAI検査機が、各カッターをあらゆる角度から入念に検査するというものです。自動化されたこのプロセスは、時間とコストを節約するだけでなく、手作業によるリスク、例えば部品の損傷や肉眼による見間違いなどのリスクを大幅に軽減します。 

ノーウッドメディカルの制御・自動化事業部長であるレオン・ジョーンズは、「私たちは最初からクライアントと協力し、共にこのプロジェクトに取り組んできました」と述べ、同社の取り組みが力強いパートナーシップに基づく、協調性に富んだものであることを強調しています。「私たちは、2018年からこの取り組みを開始し、他社に先駆けてAIの活用を提案しました。顧客はこのアイデアを受け入れ、認定プロセスを開始しました」 そしてこの革新的な検査システムが認定されたことを受け、同社は、医療用メスの組み立てなど、より多くの生産ラインにこの成功事例を適用しています。 

18,000枚の画像により、ミリ単位の正確さを実現 

リニア手術用メスの精密な検査では、刃の損傷、亀裂、厚みをはじめ、汚れ、残留物、過剰なツールマーク、材料の変形など、あらゆる欠陥を徹底的に評価する必要があります。AIモデルの学習には、18,000枚の画像が使用され、メス刃に考えられるあらゆる欠陥がミリ単位で指定されています。マシンの検出精度が高ければ高いほど、術中に刃が誤作動する可能性が低くなり、手術の精度が向上します。 

AIの成功を支えるのは、アルゴリズムの裏にある「人間の力」 

医療器具を使って治療を成功させるのが外科医であるのと同じように、AIによる画像検査システムを成功に導くのは、献身的な人間の努力です。「このシステムは、当初は、社内エンジニアによって設計・プログラミングされた、刃の損傷検査に特化したソフトウェアから始まりました」とジョーンズは説明します。「そこに可能性を見出した私たちは、より広範なチームと協力して、カスタムマシンを開発しました。この包括的なソリューションは、運用チーム全体と統合パートナーとの連携によって実現しました。プロセス全体を通じて顧客からの継続的な検証を受けたこの共同作業は、関係者全員に相互利益をもたらしました。」 

医療用メスは、測定不可能な欠陥については100%の画像検査を必要とします。チームは、すべての欠陥タイプに対応するAIモデルの完成を目前にしており、すでに立ち上げ計画が策定され、能力向上が見込まれています。 

ヘレウスには、イノベーションの文化が深く根付いています。このプロジェクトも、MIS手術における安全向上のために精度を強化するべく、AIを活用して効率を高めた代表的な例であるといえます。私たちは、より多くの患者さんに利益をもたらすため、さらなる業務改善の機会を模索しています。 

へレウスにおけるAI活用 

欠陥を見逃さない。AIを活用したヘレウスの石英ガラス製造

人工知能(AI)の用途は幅広く、それについての意見も様々です。しかし、AIが数多くの分野で役に立つということは間違いありません。いまだAIを模索する企業が多いなか、ヘレウスは既にAIを活用しています。本シリーズの第1回では、ヘレウスのAIアシスタントについてご紹介しました。今回は、ヘレウスの最重要製品のひとつ、石英ガラスにおけるAIの利点を特集します。

石英ガラス製の円筒3本が、円筒が転がり落ちないようにくぼみのある特別な木製トレイの上に置かれている。

専門家インタビュー ヘレウスにおける人工知能

人工知能(AI)は企業に全く新しい機会を提供します。テクノロジーのリーディングカンパニーとして、ヘレウスは早くからこのことを認識していました。このインタビューでは、ヘレウスのAIエキスパートであるスリネシュ・シェノイが、人工知能がすでに社内で果たしている役割について詳しく説明します。

AIが窯投入のスペシャリストに―ヘレウスコンバンスのホットな話題から 

ChatGPTをはじめ、人工知能(AI)は「なんでも知っている大天才」としてその能力を知られていますが、一方で非常に特殊な応用も可能です。工業界のパイオニアとして、ヘレウスはその両方の利点を活用しています。本シリーズの第1回ではヘレウスAIアシスタントを、第2回では石英ガラスの欠陥検出について取り上げました。今回は、石英ガラスの製造に使用される窯についてのホットな話題をお届けします。

窯内に隙間なく並ぶ、光る青銅シリンダー(AI生成画像) Generated with Midjourney; Adobe Firefly