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AIが石英ガラスの最高の品質を保証

工業や研究に使用される材料のうち、天然/合成石英ガラスは特に優れた素材のひとつであるといえます。IT、通信、医療、環境のハイテク分野で幅広い応用が可能ですが、ここで重要な要素は石英ガラスの化学純度です。ヘレウスコナミックおよびヘレウスコンバンスの2社はこの材料を製造する世界でも数少ない企業であり、最高の精度で欠陥を検出して純度を保証するため、このほど、AIの活用を開始しました。

多数の石英ガラスシリンダーを特殊金属棚に水平収納

石英ガラス製造のAIシステムは、ヘレウスのデジタル化部門であるデジタル・ハブのスペシャリストと、ヘレウスコンバンス、ヘレウスコナミックのプロセス・エンジニアリングの専門家との密接な協力と集中的な意見交換を経て開発されました。これは特別な作業でした。というのも、ヘレウスコンバンスは、光ファイバーケーブルをはじめとする通信用合成石英ガラスの世界最大の製造者であり、ヘレウスコナミックは半導体業界などに向けた天然/合成石英ガラスのカスタム化ソリューション技術により、世界を先導する企業であるからです。この作業がどれほど複雑であったかは、外部企業が現実的な解決策を得られなかったことからも明らかです。しかしデジタル・ハブの社内開発により、この2社は2023年後半に、ひとつの生産ラインおよびひとつの石英ガラス製品について、AIによる品質管理試験を行うことが可能となりました。運用開始にあたっては、まず、生産する石英ガラスシリンダーに最も多くみられる欠陥である、大きな気泡やひび割れの検出に使用されます。これまでは、この作業は従来の画像認識や、単に人間の目視によって行われてきました。AIシステムは、2024年初めにその実力を証明し、その後既存の品質管理システムの代替となることが期待されています。

3万枚の画像処理を15分で

この技術は3つの構成要素に基づいています。すなわち、1. 加工中の製品に直接設置したカメラによる画像処理システム、2. 学習した専門知識を駆使して撮影画像を評価するAIシステム、3. 結果を機械にフィードバックし、担当作業員に向けて可視化する、という要素です。 

ヘレウスコンバンスでは、数メートルもの長さの石英ガラスシリンダーについて欠陥の検査を行います。新しい自動システムでは、回転する石英ガラスシリンダーの横を連続的に移動する特殊なカメラキャリッジを用いたカメラシステムが使用されます。そして特別に開発したAIコンポーネントが、気泡や割れを自動的かつ確実に検出します。大量の画像を処理するため、AIモデルはグラフィックカードを搭載した特殊な産業用コンピューター上で動作します。ヘレウス・デジタル・ハブAIプログラムマネージャーであるクリスチャン・ピアッツィは「これには高い性能が求められます。1万~1万5000枚の画像を15分で処理する必要があるので、スピードが肝要なのです」と述べています。  

「一方ヘレウスコナミックでは、社内クラウドへのインストールで運用可能です」とピアッツィ。ヘレウスコナミックでは、プロジェクトの一環として、4つのカメラを搭載したAI測定システムがシリンダーに気泡がないかを検査します。この気泡は、照明の関係で確認が容易であるため、従来は目視検査が行われてきました。しかしガラスの状態の可否を判断するためには、わずか数ミリメートルの小さな気泡を正確に測定してその数を数えなければなりません。それが最大3.5メートルに及ぶのです。これには長い経験と、目視する人間の正確さが必要となります。将来的には、適切なAIモデルが異なるタイプの気泡を独自に識別し、正確に計測し、お客様の要望を満たすかを確認して、最適な応用を実現するようになるでしょう。

試験中、垂直にクランプされた石英ガラスシリンダー
試験中、垂直にクランプされた石英ガラスシリンダー

AIの事前集中学習

信頼性の高い欠陥検出を実現するため、ヘレウスコンバンスでは10万枚以上、ヘレウスコナミックでは600枚以上の画像をAIに学習させています。AIを訓練するため、ヘレウスのエキスパートは過去の製造で発生した欠陥カタログを分析し、最も頻繁に発生する問題を特定しました。そしてAIがそれらの問題を迅速に認識するよう、パレートの法則(80:20の法則)を使用しました。これは、「全体の努力のうち20%が、望ましい成果の80%を生み出している」という考え方です。残る20%の成果、すなわち内包物などの発生頻度の低い欠陥を特定するには多大な訓練が必要であり、これが努力の80%を占めています。そのため、経済的に実行可能な枠組みにおいてのAIのさらなる開発において、この点が追求されます。

しかし、石英ガラス製造に使用する窯のスケジューリングの効率化など、AIにはまだ多くの可能性があります。これについては、ヘレウスのAIについて詳細する本シリーズの次回に取り上げる予定です。